元よしもと芸人がカフェを開業するまでの波乱に満ちたストーリー「売れない芸人がカフェ屋さんになるまで」連載第2回「コーヒーの世界にハマったあの日のこと」

「コーヒーの世界にハマったあの日のこと」

コーヒー屋さんになるにはいろんな方法があるけれど、思えばちゃんとお金を頂いてそれも単発ではなく毎週営業するようになるまで5年もかかってしまった。

今もこうしてコーヒーを生業にしてるのは、やっぱり今でもコーヒーが好きだからだし、コーヒーは同じ豆を使っても淹れる人が変われば味が変わるから面白い。今回はそんなコーヒーにハマった瞬間の話。

当時あっけない幕切れから営業の仕事をクビになり(詳しくは前回を読んでけろ)

地元青森に泣きながら帰り1ヶ月のニート期間を経てコーヒーを勉強する!と一念発起して東京に舞い戻って来た。

とりあえずコーヒーに触れる機会があるバイトをしよう!と探してると部屋の近所に星乃珈琲があることを知る。

珈琲って書いてあるし何かしら勉強できんだろ!と阿呆特有のスーパー思い込みで特に調べたりもせずに面接の予定を決め1週間後にはアルバイトとして働くことになった。

遠藤昭平さんが入れたコーヒー
遠藤昭平さんが入れたコーヒー
ホール業務からスタートして1ヶ月後には念願のドリップ業務。白いシャツと黒いベストが制服だからあの時に見たマスターのような姿にはあっさりとなれてしまった。思えばドリップやコーヒーの味の良し悪しなんて分からないけど、ポットを使ってお湯を注ぐ練習にはなったと思う。後はオーダーがいっぱい入った時にどう捌くかは星乃珈琲でかなり鍛えられたように思う。

ある時当時の店長から、

「コーヒーにはカッピングって言って、スプーンにすくったコーヒーを勢いよく啜って味を見極められないとコーヒー屋さんにはなれないらしいよ」

と世間話の流れでそんな話になった。

今でもそうだけどカッピングをネット検索すると鍼治療などで使う背中におぞましい色のアザが出来るあのカッピングが出てくるから、現在でも一般的にはコーヒー屋さんかコーヒー好きしか知らない単語である。が、「それが出来ないとコーヒー屋さんになれない」なんて言われたもんだからすぐさまカッピングセミナーを申し込んで参加してきた。

当時星乃珈琲でバイトを始めて3ヶ月。バイト行かない間も近所にあるコーヒー屋さんを巡ったりしてそれなりにコーヒーには触れていたけれど、とにかく周りの参加者のレベルが高い!

今振り返ってみるとコーヒーの企業に勤めてる方や商社さん、個人でコーヒー屋さんを始めてる方、あとはこのテのセミナーによく顔を出すコーヒー狂人も参加するセミナーなので、当時の僕はそれをスカウターなしで肌で感じたということか。

前段でも軽く説明したが改めてカッピングを説明しよう。

挽いたコーヒー豆をお湯に浸けて簡易的なコーヒーを作ったらカッピングスプーンと呼ばれるスプーンでコーヒーを勢いよく啜って口の中の上の部分(アツアツの料理を勢いよく食べた時に皮がベロンとなる箇所あたり)にコーヒーを霧状に当てて、コーヒーをより正確にどんな味なのかをジャッジする手法である。味だけではなく挽く前の豆の香り、挽いた後の豆の香り、お湯に浸けた香りなど総合的に判断して最終的には点数を付ける。

とまあ書いてみたけど食べ方がヘタクソで熱いものを食べて皮がベロンとなるのは僕のあるあるだった。

すまん、簡単に言うならワインソムリエのコーヒー版と思ってくれ。

遠藤昭平さんのドリップコーヒー
遠藤昭平さんのドリップコーヒー
今でも忘れない。3種類のコーヒー豆をみんなでヨーイドンでカッピングをして感じた味を表現しましょう!ということで、僕も見よう見まねでコーヒーを啜ってみたけど何がどう違うのか全く分からない。

すると隣の席にいた人をチラッと見ると、

「えーと、、レッドアップル、チェリー、ネクタリン、ちょっとだけピーチがいたかな〜。ベリー、あ、ベリーはレッドベリーでぇ、一瞬チョコレートが目の前を通っていったな〜……」


ななな、何が起きてるのだ!同じコーヒー飲んでるのに!!ちょっとだけピーチってなんじゃい!!分からん!分からんぞ!!ていうかそもそも何でフルーツで例えるのん??チョコレートが通るって勝手に擬人化すんじゃねえ!擬人化したらそうなれるのかい!?てめえスカした感じでダラダラ喋りやがって!!うお〜!!!

感情が溢れた。もうパニックである。コーヒー業界のフリーザと対峙した瞬間である。その戦闘力たぶん53万!自分の持てるだけの気を解放しても到底及ばない。

コーヒー屋さんってみんなこうなのか…。。

とんでもない世界に踏み込んでしまったのでは、と不安になったけど面白い!と思えた自分がそこにはいた。

今思うとどれだけ味覚が研ぎ澄まされてる人でもここまで表現出来る人はそうそういない。

あのセミナー以来、これを越えるカッピングの猛者に出会ったことがないのでおそらく数打ちゃ当たるで例えを出してまわりの反応を見たのでは?説が有力だ。あいつやってんな〜。。

何はともあれこのセミナーに参加したことでコーヒー屋さんになるのに必要な素養は分かったし、自分には足りないものがたくさん見つかった。

何より「星乃珈琲だけでは足りない!やはりちゃんとしたコーヒー屋さんで働かなければ!」と強く思えたのは大きい。そして働けるコーヒー屋さん探しの旅に僕は出ることになった。

今回はここまで!そんなこんなでセミナーで手練れのコーヒー狂人にボコボコにやられてマウントを取られましたが、現在では東京の三鷹市でほぼ’sカフェというヘンテコな名前でカフェをやってます。

次回は今もお世話になっている師匠から教わったコーヒーの大事な話、というテーマで綴ります。お楽しみに!
ほぼ's カフェ
青森県十和田市出身。8年間お笑い芸人として活動したのち、営業マンを半年でクビになり、喫茶店のマスターに憧れてコーヒーの勉強を始める。
現在は三鷹市で駅前のBARを間借りして営業中。
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